創業120年 会津の老舗 『菓子司 熊野屋』が、会津若松市七日町の名物を作り上げました。もっちりでしっとりとした黒糖の生地と自家煉り皮むき餡が、あとを引く美味しさです。是非ご賞味あれ。
夕暮れに染まる下町商店街。
この道は、遊び場から家路までの、いつもの帰り道。
お惣菜の美味しそうないい臭いが、寝ている腹の虫をいつも起こしてしまう。
「ググゥーーー。」
「早く帰って、おっかぁーが作ったご飯が食べたいな。」
長く伸びた自分の影を追いかけるようにして
自然に小走りになりながら家路を急ぐ。
息を上げてやっとたどり着いた我が家の玄関先。
「今日のおかずは、何かな?この臭いは、きっとおいらの大好きな・・・。」
商店街なんかに負けないくらいいい臭い。
そして、おっかぁーのまな板を叩く音が「トントントン・・・。」
玄関をおもいっきり開け、泥んこの運動靴を脱ぎ捨て
まずはおっかぁーが居る台所へ直行。
「おっかぁー ただいま!はらへった!」 と第一声。
「帰って来ていきなりそれかい?もうちょっと待ってなよ。もうすぐできるから。」
おっかぁーの優しい声が期待して見上げた顔を項垂れさせた。
「大分やんちゃしてきたみたいだね。まずは、手と顔を洗ってきな。いいものあげるから。」
「ちゃんと石鹸で洗うんだよ!」
おっかぁーのあの言葉は、魔法なのか?
「いいものあげる」で洗面所へ一目散。
石鹸のことなんか聞こえちゃいない。
取り合えず急いで手と顔を冷たい水でジャブジャブと洗い流す。
自分専用の踏み台に登り背伸びして、やっと顔が映る鏡で泥が付いてないかを確認すると
バタバタと足音を立て、おっかぁーが居る台所へ戻り、
どうだとばかり自慢げに手と顔をおっかぁーに見せる。
「待ってる間、これでも食べてな。もうすぐだからね。」
と おっかぁーの柔らかな優しい手からそっとさし出された物は、
帰り道の商店街で人気の茶まんじゅうだった。
思わずニッコリして見上げたおっかぁーの顔は、
優しく包むような微笑に溢れていた。
そして、その茶まんじゅうは、やっぱり優しい味がした。
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